INTERVAL 89,93
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    目 次
発刊のことば
憂いの唄
鳥人願望
青い林檎
ある街の残像
陽炎の瞳
大学の午后
Campus
退屈な夜
角笛
夜来の声
梅雨
雪の日
掌紋
失楽園



   発刊のことば

 この詩集は拙詩集「錯綜」89−92の補遺版のようなものです。その名も「INTERVAL」89,93。安易なネーミングだと自ら認めるその中身は、どうぞ見てやって下さい。この僕にも15のころがあったのだということと、とうとう20になったのだということの同時証明であります。えっ、どれがどちらのものか分からないって。す、するどい。5年たっても進歩がないことが暴露されてしまった。まあ、それは置いといて、89年のものは初掲が某東高文芸部アンソロジー「たんかい」、93年のものは初掲なし、未公開です。では、


潔さ、蒼さ、澱んだ空

眩しくて目をつむる

瞼に赤く空がひろがる


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 憂いの唄
黒い砂漠の中で
生命の泉のあふれた
緑のオアシス
そのうえで
服を着た蟻たちが
石と鉄と鉛と
蜜で築いた空虚な文明に
哀しく踊らされている

彼らは争いながら共存し
泉の水を飲みほす
汚い鉛をまき散らし
オアシスを砂の中に帰す

その浪費者たちは
生産者たちを
食らい尽くし
追い廻し
自分たちが支配者であることを信じる

偉大なる母はかわいそうな彼らを
その地獄から救い出し
新たなる地獄へ導こうと
考えているのだろうか


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 鳥人願望

鳥は自由か
鳥は幸福か

危険も一杯
幸せなことばかりではなかろうが

しかし
青く限りなく自由な空を
自分の力で飛び回ってみたい
白い綿のような雲の中で
隠れんぼをして遊んでみたい

その夢は
人間の愚かさゆえおこる幻か

嗚呼
未だ人は羽撃くことを知らず


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 青い林檎

エーテルの海の中を
青い林檎が浮かんでいる

その林檎は病んでいる

林檎の薄い皮が
黒く変色し
腐れ落ち
中から硫黄色の果汁が噴出し
皮の表面にへばりついた

微弱なムシどもを
押し流し
残酷にいたぶり殺す

いつの日か
その日は林檎のみが知っている


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 ある街の残像

生きることが全てさ

だから詩なんていらない
だから愛なんていらない
だから友なんていらない

誰にも解りはしないのさ
すべては信じられないのさ

   ・    ・

いつも哀しい顔をして
この街で暮らした僕に
爆風は
暖かさを呼び戻してくれた

いつも哀しい顔をして
生きることに疲れた僕に
爆風は
絶対かつ永遠なものをくれた

   ・    ・

オネガイダヨ
僕ヲタスケテ
コノ街ハモウ
息苦シクテ
タマンナイヨ
僕ノ姿ガ見エナインダ


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 陽炎の瞳

陽炎の瞳が街をたゆう
乾いた眼球は血流が滞り
現在に化石したかに歩む
永劫に潤うこともなく

寂寞たる無関心、ニル・アド…

街の雑踏は世界に開かれた口
目的ある無目的、秩序ある無秩序

陽炎の瞳が互いに交錯し
何をか与え、なにをか得なかった
寂寞たる無関心がたゆう

誰が感動しよう、誰が嘆くであろう
雑踏とは寂寞の代名詞ではないか
誰が瞳を潤そう
泪は其処で化石しているではないか


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 大学の午后

いかりに満ちた生命たちを見て
本気でおこれない
本気でわらえない
本気で泣けない
無感動になってしまった

いつしか
佇立した


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 Campus

大理石で新造された柱石群
轢殺する子どもたち
絞殺される大人たち
黄金は失われた

生の無目的
水銀の臭気、体温計の惰性
生が散乱する
レアリストたちの自画像

αはβを、βはγを
アルパはオメガを
新造されたアルパ

アルパのオメガへの指向
生の生への無目的
死者たちに捧げられた黄金


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 退屈な夜

寝るのはちょっと癪だったから
眠りの神には少し休眠してもらって
そんな夜は退屈だった

定常、保守、静穏
そんな営為を幻想はしないが
陽の当たる場所はやっぱり怖い

夜の王国、退嬰の散華
そんな営為を幻想はしないが
昼に起きるなやっぱり怖くて
そんな夜は退屈だった


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 角笛

遠い遠い海の底へ
ひとつの角笛が沈んだその時から
角笛は鳴らないことが定められた

そして大魚に食われたか
はたまた砂に沈んだか
角笛は海から消えて

角笛は化石になって
どんな音色を伝えたか
どんな息吹を伝えたか

博物館に陳列され
動物学的解釈がなされて
大魚の喉の骨であるかしれない


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 夜来の声

月が挽かれていく
僕が挽かれていく
挽歌が月夜を巡る
大地が僕らから逃げる

僕は古代の牛裂き刑に
処せられた死体のよう
錯乱している
昂奮している

僕の四散した五体が
金星の大地で邂逅を果たした時
硫酸の大地に月は沈み
新たな生は陽のように散乱し

世界は一変しているだろう

挽歌は大地に根づき
大地はもう僕らのものだ


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 梅雨

雨だらけ
日本中
ぬれそぼって
嗚呼
裸でいたい


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 雪の日

雪の日、滑り、歩く
靴底は真っ平ら
アスファルトは白銀の中に沈み
「開発」の中の自然の勝利


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 掌紋

掌紋がひかりを浴びて
白くそして褐色に波打つ

噫、見える
果てしない砂の風紋が

けれどそこには僕の足跡がない
そしてその向こうには

砂漠の蜃気楼
蜃気楼の砂漠には足跡がない

僕はそっと息を吹く

蜃気楼は微かに揺らいで
白くそして褐色に波打つ


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 失楽園

音楽が地上に充つる
濫費される語彙
濫費される文化
濫費される生命

呀だけが踊り続ける
乱造される物語
乱造される歴史
乱造される人生

嗚呼、何なのだ
全ての響き、全ての叫びや
全ての価値あるとされたもの

綿毛よりも軽く費やされ
鉄くずと変わらぬ造りよう
安価すぎる劇場にて

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INTERVAL 89,93
発行者 永一直人(地碧星)
編集  
1994年3月22日初版発行
1999年4月5日第2版発行


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