曹植「野田黄雀行」



     野 田 黄 雀 行

高樹多悲風
海水揚其波
利剣不在掌
結友何須多
不見籬間雀
見鷂自投羅
羅家得雀喜
少年見悲雀
抜剣捎羅網
黄雀得飛飛
飛飛摩蒼天
來下謝少年
高樹には悲風多く
海水は其の波を揚ぐ
利剣の掌に在らずば
友と結ぶに何ぞ多きを須いん
見ずや籬間の雀
鷂を見て自ら羅に投ず
羅する家は雀を得て喜ぶも
少年は雀を見て悲しむ
剣を抜きて羅網をはらい
黄雀は飛び飛ぶをえたり
飛び飛びて蒼天に摩し
來り下りて少年に謝す

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[解釈]
高い樹には悲しげな風が吹きつけ
海の水はその波を荒らげている
鋭い剣が掌中になければ
友とするのに多ければいいわけではない

見てみろよ垣根の間の雀を
鷹を見て自ら網の中に飛び込んだ
網をかけた家は雀を捕らえて喜んでいるが
少年は雀を見て悲しむのだ

剣を抜いて羅網を薙ぎ払いはらい
黄色の雀はふたたび飛ぶことができた
飛び飛んで蒼天に身をこすりつけ
また下りてきて少年に感謝しているよ

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[解説]
雀にことよせて苦しんでいる友人を救助する力のない自分を嘆く歌といわれます。漢代のわらべ歌の替え歌のかたちで作られました。曹植の代表作のひとつです。

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[参考文献]入谷仙介『中国古典選23 古詩選上』(朝日新聞社)
       松枝茂夫編『中国名詩選上』(岩波文庫)
       吉川幸次郎『三国志実録』(ちくま学芸文庫)


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